10年使ってきたわが家の電気ケトルが、廃番になっていました。理由を調べていて、はじめて知ったことがあります。
2026年6月から、電気ケトルの安全基準が変わっていました。倒れたときにこぼれるお湯の量に、基準ができたのです。
そして、ややこしいのはここからです。それ以前に入ってきた製品の在庫は、今も普通に売られています。同じ売り場に、基準を満たしたものと、満たしていないものが並んでいる——そういう状態が、いま起きています。
先に結論:見分け方は2つです
・Sマークがついているか
・仕様に「転倒湯もれ防止」「転倒流水防止」と書かれているか
迷ったらSマークです。理由はこのあと書きます。
2026年6月、何が変わったのか
消費者庁のコラムに、はっきり書かれていました。
経済産業省において電気ケトル等に関する安全基準が見直され、2026年6月以降は、日本で製造又は日本に輸入される電気ケトル等の全てに転倒流水対策を施すこと(電気ケトル等が倒れても、その湯漏れが50ml以下であること等の転倒流水試験に合格した製品であること)が必須となります
消費者庁 コラムVol.11「転倒時に湯漏れしにくい電気ケトルの使用を!」
倒れても、こぼれるお湯が50ml以下。これが新しい基準です。日本で作られたものも、輸入されたものも、どちらも対象です。
なぜ変わったのか
背景にあるのは、小さな子どものやけど事故です。消費者庁のページには、0歳10か月と0歳9か月の子どもが熱傷を負った事例が載っていました。台の上に置いたケトルが倒れて、頭から熱湯をかぶった——読んでいて、手が止まりました。
日本では、ケトルを床や低い台に直接置く習慣があることも理由に挙げられていました。言われてみれば、わが家もそういう置き方をしていた時期があります。
わが家の10年選手が、この基準で廃番になりました
ここからは、他人事ではない話です。
わが家で10年目になる電気ケトルは、ラッセルホブスのカフェケトル1.2(7412JP)です。本体の底に「2016年製」と書かれています。壊れる気配もなく、いまも毎日動いています。
ところが、メーカーの告知(2026年5月11日)を読んで分かりました。転倒流水対策をしていない製品は2026年6月以降は輸入できなくなるため、在庫が無くなり次第、廃番。その【対象製品】の一覧に、うちの型番がそのまま載っていました。
売れなかったから消えたのではありません。基準が変わって、そのままでは入ってこられなくなったのです。10年使って気に入っていた道具が、そういう形で区切りを迎えるとは思っていませんでした。
いちばん気をつけたいのは「在庫」です
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。消費者庁のページには、こう書かれています。
2026年5月以前に日本で製造又は日本に輸入された転倒流水対策がなされていない電気ケトル等の在庫については、2026年6月以降も引き続き販売される可能性があるため、購入の際にはよく確認してください
消費者庁 コラムVol.11
つまり、基準が変わったからといって、売り場のケトルが全部入れ替わったわけではありません。むしろ今は、廃番になった旧モデルが在庫として残っている時期です。
小さなお子さんがいる家庭では、値段より先に、ここを確認してほしいと思います。
実際の確認のしかた
お店やネットで見るとき、順番にこうすると分かります。
1. Sマークを探す
電気用品安全法を補完する第三者認証で、電気ケトルでは転倒流水試験に合格した製品につきます。マークは単体ではなく、認証した機関のロゴと組み合わせて表示されます(S-JET/S-JQA/S-UL Japan/S-TÜV Rheinland)。本体の表示ラベルを見てください。
2. 仕様欄を見る
「転倒湯もれ防止」「転倒流水防止」の記載があるか。価格.comの電気ポット・電気ケトル397製品のうち、この表記があるのは210製品でした(2026年9月時点)。※表記がないものが対策なし、という意味ではありません。書かれていないだけの場合もあります。
3. メーカーのサイトで絞り込む
たとえばタイガーの製品一覧には「倒れてもお湯がこぼれにくい」という絞り込み条件があります。メーカー側が用意してくれている確認手段です。
4. 「新基準モデル」という言葉を探す
家電量販店が、商品名に「新基準モデル」と付けて売り始めています。これから増えていく表記だと思います。
メーカー側も同じです。象印は電気ケトルの商品ページに「新安全基準適合品」というバッジを表示していて、どの規格のどの版に適合しているかまで注記しています。さらに「象印の電気ケトルはすべての製品においてSマーク認証を取得しています」と明記されていました。こういう書き方をしているメーカーは、探す側としては分かりやすくて助かります。
対策済みの機種は、すでに出そろっています
各社とも、対策済みであることを公式サイトに書いています。探すときの手がかりになります。
・山善…倒れてもお湯が漏れづらい安全設計の機種を2024年9月から展開。2024年12月には「お手頃な価格帯」にも広げたと発表しています。内フタのパッキンで注ぎ口までの流路を塞ぎ、さらに押している間だけ注ぎ口が開く「給湯レバー」で、閉じ忘れを防ぐ仕組みまで付けていました
・タイガー…製品一覧に「倒れてもお湯がこぼれにくい」の絞り込みがある
・象印…「新安全基準適合品」と明示
・ティファール…「転倒してもお湯がこぼれにくい構造」と記載
安いものは対策が後回し、というわけでもありません。手頃な価格帯にも広がってきています。つまり「対策済みが出そろうのを待つ」必要はもうありません。いま選べます。
子どもがいるなら、ポットのほうが安全?
「ケトルは倒れるから、据え置きのポットのほうが安全では」——私も、そう考えました。でも消費者庁の資料を読んで、考えが変わりました。
高さ約30cmの台に置かれた電気ポットにつかまって立ったところ、ポットが倒れて95度の熱湯が足や腕にかかり、やけどを負った。(1歳)
消費者庁 コラムVol.565「電気ケトルやポット、炊飯器でのやけどに注意しましょう!」
ポットも倒れています。1歳の子が、つかまり立ちに使ったんです。
消費者庁はケトルとポットを分けずに、「電気ケトルやポットは倒れても中身がこぼれにくい製品を選びましょう」と書いています。さらに「本体が手の届かない場所にあっても、電源コードを引っ張って転倒することもある」とも。ポットは重いぶん、倒れたときに出てくる熱湯の量も多くなります。「据え置きだから安心」とは言えませんでした。
ひとつだけポットに分がありそうなのは、蒸気です。国民生活センターの調査では、約4割の人が、家電から出る蒸気で乳幼児がやけどすることを想定していなかったそうです(約1割は、やけど、またはやけどしかけた経験あり)。「蒸気レス」「蒸気カット」「蒸気セーブ」と書かれた製品は、ポット側に多くあります。
結局のところ、小さな子どもがいる家に「絶対に安全な製品」はないのだと思います。だから順番が大事で、①電源コードも含めて、手の届かない場所に置く ②そのうえで、倒れてもこぼれにくいものを選ぶ ③蒸気の対策も見る——この順になります。消費者庁が挙げている順番も、これと同じでした。
正直なところ:対策済み=絶対安全ではありません
ここは正直に書いておきます。
消費者庁が事故を防ぐ方法として最初に挙げているのは、製品選びではなく置き場所です。電源コードも含めて、小さな子どもの手が届かない場所に置くこと。そのうえで、安全に配慮した製品を選ぶこと、という順番でした。
それから、安全機能があっても部品が劣化すれば湯漏れのリスクは上がるとも書かれています。内蓋のパッキンなどです。新しいケトルを買っても、そこは変わりません。
そして、これはメーカー自身が書いていることです。象印の商品ページの注記には、「ロック状態になっていても、本体を傾けたり倒したりすると、注ぎ口などからお湯が流れ出る恐れがあります」とありました。対策済みの製品でも、こぼれないわけではありません。こぼれる量が抑えられる、という話です。
ティファールも同じです。「転倒してもお湯がこぼれにくい構造」と書いたうえで、「万一転倒した場合は、お湯が少量こぼれ出る場合があります」と添えていました。2社が同じことを書いているので、これが実態なのだと思います。
今すぐ買い替えなくてもいい人
・小さな子どもやペットが家にいない
・ケトルを高い位置に置いていて、コードも垂れていない
・今の一台が問題なく動いている
わが家の10年選手も、いまも現役です。基準が変わったからといって、動いているものをすぐ捨てる必要はないと思っています。次に買い替えるとき、選ぶ基準がひとつ増えた——そう受け止めています。
まとめ
・2026年6月から、電気ケトルは倒れても湯漏れ50ml以下が必須になった
・ただしそれ以前の在庫は今も売られている
・見分け方はSマークと仕様欄の「転倒湯もれ防止」
・製品選びより先に、置き場所とコード
うちのケトルは、この基準で廃番になりました。10年使ってよかった道具なので寂しさもありますが、倒れたときに50ml以下しかこぼれないケトルが当たり前になるのは、いいことだと思います。
知ったうえで、好きなものを選べばいいと思います。知らないまま選ぶのと、知って選ぶのとでは、同じ買い物でも意味が違ってきます。
電気ケトルが実際どれくらいもつのかは、10年以上使ってきた記録をこちらに書いています。

メーカーやタイプごとの選び方は、家族3世帯で使っているケトルを比べたこちらに。

容量で迷っている方は、こちらもどうぞ。


